Category : 本/雑誌 のアーカイブ

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2009年08月02日

2009年夏の読書課題

何となく思い立って目標なんぞ立ててみました。


山本周五郎賞受賞全作品読破!


いや何作か読んで結構当たりだったのでやってみようかなーと思い、
あえて宿題っぽく宣言してみましたww
これから1ヶ月、どこまで読めるかなぁ。


リストはこちら。読み終わったら斜線で消して感想書けたらリンク張ります。


山本周五郎賞受賞作品
第01回 山田太一『異人たちとの夏』
第02回 吉本ばなな『TUGUMI つぐみ』
第03回 佐々木譲『エトロフ発緊急電』
第04回 稲見一良『ダック・コール』
第05回 船戸与一『砂のクロニクル』
第06回 宮部みゆき『火車』
第07回 久世光彦『一九三四年冬―乱歩』
第08回 帚木蓬生『閉鎖病棟』
第09回 天童荒太『家族狩り』
第10回 篠田節子『ゴサインタン―神の座―』
      真保裕一『奪取』
第11回 梁石日『血と骨』
第12回 重松清『エイジ』
第13回 岩井志麻子『ぼっけえ、きょうてえ』
第14回 中山可穂『白い薔薇の淵まで』
      乙川優三郎『五年の梅』
第15回 江國香織『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』
      吉田修一『パレード』
第16回 京極夏彦『覘き小平次』
第17回 熊谷達也『邂逅の森』
第18回 垣根涼介『君たちに明日はない』
      荻原浩『明日の記憶』
第19回 宇月原晴明『安徳天皇漂海記』
第20回 森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』
      恩田陸『中庭の出来事』
第21回 伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』
      今野敏『果断 隠蔽捜査2』
第22回 白石一文『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』


ちなみにイタリックのは昔に読んだけど忘れてるやつ。優先度低めです。

2008年02月16日

伊藤整『鳴海仙吉』

鳴海仙吉 (岩波文庫)鳴海仙吉 (岩波文庫)
伊藤 整

岩波書店 2006-07
売り上げランキング : 343205

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今年に入ってから何となくジャンルを固定せずに読もうという意識(はて?)が強くなっているためか、図書館で本を借りるとき「戦国系2冊、ミステリ1冊、エンタメ系1冊、純文系1冊、ラノベ1冊」のような消化不良を起こしそうな借り方をしています。とは言え、音楽にも言えることですがワタシは元々物事に関するジャンル分けの概念に疎いためどれがどのジャンルに属するのかよく分からんのですね。なのでこのジャンル傾向借りも明確な基準があるのではなく主な判断基準は装丁と出版社です。そしてこの伊藤整先生の『鳴海仙吉』は岩波文庫だったので純文だろうと適当に判断して借りた訳ですがなんか色々と予想を裏切ってくれて面白かった。


この『鳴海仙吉』というタイトルが前から気になっていた上、分厚くて読み応えがありそうだったため借りたのですが作者があの著名な評論家の伊藤整先生であることに気付いたのは読み始めてから。冒頭を読んでいたときは単なる私小説だと思っていたのに途中でいきなり主人公鳴海仙吉が雑誌に発表したという体裁の評論文が章ひとつ分丸々使って登場した上、仙吉自作の詩なんかも随時ぽんぽん出てきてしまうのだからアレと思うのも当然って言うか作者の名前くらい読め自分。教科書にも載るようなお堅い評論野郎のイメージがあった伊藤先生が小説を書いていたことは知っていましたが、こんな愛だの恋だのに迷ったり卑屈オーラ全開の鬱男の独白を延々続けたりする人間臭い小説を書くなんて意外だったなぁ。ただ単にワタシが無知なだけなんですが。でもホントあの肖像写真と『小説の方法』のイメージから「一緒に死んで呉れなかったの」なんてセンチメンタルなフレーズは出てこない。まぁアレは仙吉の作品で伊藤先生が書いた訳ではないといわれればそれまでですが、どうみても仙吉の描写(特に見た目)は伊藤先生そのものな気がしてならないのですよ。冒頭で「私小説ではなく鳴海仙吉はあなたです」という文言がなければ間違いなく自伝だと思ったに違いない。とブツブツ言ったところで小説として発表された以上、それが虚構であれ事実であれ読むワタシにとっては対岸の火事には変わりがないので嘘か誠かはどうでも良い。ただ今まで知っていた伊藤整のイメージとは随分違うところにあったかなぁ。評論ってあまり得意でないので伊藤先生は敬遠していたのですが、小説は割と好きなタイプかもしれない。常に思考の中心は自分で他者の自分に対する目、自分が他社に振舞う行動に対する他者の批評を気にする辺りは特に痛いところ突くなぁって感じ。基本的に文系の男子女子って自意識過剰だなぁと常日頃自覚しているそれを思いっきり引き摺り出されるような気持ちにさせられたのは勘弁だったけど、また1年後くらいに読んでみたい。


しかしこの「私小説+詩+評論」のチャンポン、正直こんなに自分のやりたいことを1冊に詰め込むなんて贅沢すぎやしないか。しかもオチは後味の悪い感じの戯曲で締めてるし。ワタシはユリ子に同情出来ないので仙吉を非難する気持ちにもなれないのですが、マリ子とユリ子のお互いに対する薄ぼんやりとした悪意が妙に怖かった。あと仙吉の奥さんが全く登場しないあたりに夏目先生の『こころ』のお嬢さんを思い出した。常に正当なポジションにいるものは外野に置かれるのが日本文学の伝統なのかしら。

2008年01月03日

2007年マイベスト〜本〜

今年出た本ではなく今年読んだ本で印象に残った10冊についてツラツラ書いてみます。


◎疾走 / 重松清

疾走 上 (角川文庫)疾走 上 (角川文庫)
重松 清

角川書店 2005-05-25
売り上げランキング : 38063
おすすめ平均

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好きなサイトさんの日記で拝見したこの本のタイトルの傍に『兄弟の相克』という文字列を発見し一も二もなく手を出しました。珍しい二人称の文体には最初手こずらされましたが読み進めていくうちにそんなことが気にならないくらい世界観にどっぷり濱ってしまいました。一人の少年のあまりに長く短い一生が突き放したような調子で淡々と語られるのはぞくぞくしますね。欲を言えば兄弟の対決がもう少し欲しいところでしたがあの兄にはそういう甲斐性もないんだろうな。理屈抜きに面白い1冊でした。今年のベスト1に挙げたいくらい。


◎いつもの朝に / 今邑彩

いつもの朝にいつもの朝に
今邑 彩

集英社 2006-03
売り上げランキング : 82197
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今邑彩は元々好きな作家でしたが、この作品は今までにない感動があって良かった。ELTの『恋文』のPVで毎回泣けるくらい割と涙腺緩いワタシですが、このひとの作品に泣かされたのは初めてだ。『失踪』と同じく兄弟の相克をテーマに扱ったものですが、こちらは全体的にソフトな感じ。背景に追っているものはむしろこっちの方が重い筈なのにソフトに感じる理由は兄弟を取り囲む女性たちの存在でしょう。特に兄弟の母親の神っぷりは異常、ラストまでこのひとの存在感が異常すぎて主人公である兄弟が霞んでしまうくらいに。そこがワタシの中で『失踪』に劣る理由かもしれない。もちろん大好きなんだけど。


◎シンセミア / 阿部和重

シンセミア〈1〉 (朝日文庫)シンセミア〈1〉 (朝日文庫)
阿部 和重

朝日新聞社 2006-10
売り上げランキング : 153165
おすすめ平均

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急に阿部和重に興味を持って片っ端から読んでみたけれどどれもこれも短くて困る。純文だから仕方ないのかもしれないけどもうちょっと長居の読みたいよなーと思っていたらこれがありました。いやぁ分厚いハードカバー2冊組みですよ。もう読み応えありまくり。このひとのは短編でも結構抉られていたのでこの『シンセミア』には後頭部と言わず頭部を万遍なく袋叩きにされたようなショックをいただきました。現実ってこんなに絶望的?と思わず問い掛けたくなるような力の理論と運が悪いとしか言いようのない不幸、今までの作品でも味わった世界が崩壊する感覚が強く深くじっくりと襲ってこられたので参った。芥川賞のアレでロリコン作家と本読みのマイ友人にも思われているのですが残念なことだ。こんなに面白いのに。


◎ラッシュライフ / 伊坂幸太郎

ラッシュライフ (新潮文庫)ラッシュライフ (新潮文庫)
伊坂 幸太郎

新潮社 2005-04
売り上げランキング : 720
おすすめ平均

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伊坂幸太郎というお人も2007年に初めて知った作家でした。ゆずさんに「何か貸して」と頼んで貸してもらったのがこの『ラッシュライフ』だったんですが、最初読み終えたときはむしろ似たような作品である恩田先生の『ドミノ』に比べて希望がないし暗いし後味悪くて嫌いだったんですよ。でも他に何冊か伊坂作品を読んで後味の悪さも味わいまくった結果このラッシュライフの終わりに希望を感じられるようになりました。明るくはないんだけど皆最後は前向きなんだなーということが実感できた。ワタシもこういうくたばりぞこないでも前向きの姿勢をもって生きていきたい。伊坂先生は今年も追い続けますよ。


◎高村薫 / 照柿

照柿(上) (講談社文庫)照柿(上) (講談社文庫)
高村 薫

講談社 2006-08-12
売り上げランキング : 117972
おすすめ平均

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どうでも良い日常の中に爆発の種がある。この作品での起爆装置はひとりの女性だったけど実際ふっと沸いたように起こる小さな不満の連鎖はいついかなる時でも起こり得ることだし、そういう意味では何も特別なことがないだけに怖い話だなぁと思った。ただ不満というか萎える話をすれば合田刑事の存在が相変わらずリリカルで好きなんだけど力が抜ける。合田刑事と言うよりも義兄殿とのやり取りが駄目なんだろうけど。うーん、でも文章はすごく好きなんだ。そんな理由もあって『レディ・ジョーカー』と迷ったけどこっちにした。あっちはラストと言うか終盤でひどいどんでん返しを食らったからな。


◎アグネス・グレイ / アン・ブロンテ

アグネス・グレイ (ブロンテ全集 8)アグネス・グレイ (ブロンテ全集 8)
アン ブロンテ Anne Bront¨e 鮎沢 乗光

みすず書房 1995-08
売り上げランキング : 542511

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シャーロットの未読も今年は読んだけど、甘く見てたアンに横っ面叩かれたのでこれで。冷静な観察眼とリアリティを追及する描写には圧倒されました。ワタシの今年の目標はブロンテ姉妹の全集を揃えることです。彼女らの作品を常に手元に置いておきたい。


◎化物語 / 西尾維新

化物語(上) (講談社BOX)化物語(上) (講談社BOX)
西尾 維新 VOFAN

講談社 2006-11-01
売り上げランキング : 6056
おすすめ平均

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西尾維新もよく読んだので作家括りでひとつ。このひとの狙い過ぎるくらい狙った世界観は逆に清々しいと思う。文体やキャラクターからラノベ扱いされるのは仕方のないことだろうけど、ここまでフルスロットルで何かを振り切った文章というのは書けそうで書けない気がするんだよなぁ。おかげでほとんどの作品を読んでしまった。
そのうちで『化物語』を選んだのはこの話が冒頭すごくつまらなかったから。なんか全然読み進める気にならなくて放っちゃおうかなーと思ったくらいだった。そこを我慢して読み続けていたら、下巻に入る頃にはしっかりはまってしまっていた。たとえ内容が微妙でも(失礼)反復することによりそれが自分の中に馴染んでいくということを実感した1冊です。そういう意味ではシリーズものが強いのも分かる。


◎まひるの月を追いかけて / 恩田陸

まひるの月を追いかけて (文春文庫 お 42-1)まひるの月を追いかけて (文春文庫 お 42-1)
恩田 陸

文藝春秋 2007-05
売り上げランキング : 148276
おすすめ平均

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恩田先生も相変わらず色々読んでますが未だコンプには至らず。どれ読んだのか分からなくなっているせいもあるんですけど(『禁じられた楽園』なんて間違えて3回読んだ)、作品自体も多いですよね。そんなわけで慌てず文庫化されたものから読んでます。
そんな恩田作品で今年読んだ中のベストはこれ。失踪した異母兄と彼を探す恋人(の振りした友人)に連れて行かれる『私』、とにかくこの友人がすごく良かったなぁ。決して善人ではないし、自分の目的のために『私』も平気で騙しちゃったりしてるんだけど本人自身も余裕が無いところがひとの複雑さを感じさせてくれる。そういう意味ではラストよりも彼女が消える辺りが印象的だった。繰り返し読みたい1冊だ。


◎反逆 / 遠藤周作

反逆〈上〉 (講談社文庫)反逆〈上〉 (講談社文庫)
遠藤 周作

講談社 1991-11
売り上げランキング : 97424
おすすめ平均

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駆け込みで時代劇。年末にはまったゲームの影響で戦国時代を扱った小説が読みたいとゆずさんに話したら教えてくれたのがこの本。彼女お気に入りの荒木村重をメインに据えた小説だそうで、荒木のあの字も知らない自分には大変新鮮でした。遠藤周作先生の文章はもちろん好きだしそういう意味でも読みやすく、また合戦知識がヅラヅラと書かれている訳でもないので戦国初心者にも優しい。荒木村重の奥方がまた素敵な女性で夫婦のやり取りを細やかに書いているところが遠藤先生っぽくて良いなぁ。ゆずさんがオススメするだけある。
しかしこの小説に出てくる信長公はマジでここまで凄いの?っていうくらいの超王様なんですが、もし実際にこんなんでそれを明智光秀が殺したとしたら明智もかなりの化け物だ。まぁ暗殺には諸説あるようなので明智ひとりで殺したとは言えないのかもしれないけどなかなか戦国時代も面白い時代なんですね。これまで全く興味がなかったので(ワタシは鎌倉幕末専門)、今年はちょっと手を出してみようかと思います。


◎一八八八 切り裂きジャック / 服部まゆみ

一八八八切り裂きジャック (角川文庫)一八八八切り裂きジャック (角川文庫)
服部 まゆみ

角川書店 2002-03
売り上げランキング : 187304
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これまたゆずさんに「何か面白いのかしてー」と頼んで貸してもらった1冊。切り裂きジャックといえば数多くの作品を生み、色々な小説のモチーフにもなっていますがこれは当時のイギリスに滞在した日本人視点で語られていて面白かった。既に感想書いているので特に語ることはないですが、このあと服部先生の本を色々と読んでみて『シメール』でぶっ飛んだことは書き留めておきたい。ほんとビックリした。


他にも色んな楽しい本との出会いがありましたがそれは追々書いていきます。ゆずさん紹介の本が多いので今年も紹介してもらおう。よろしくね。
今年は時代小説とあと日本の純文学、あとラノベを強化したい。余裕があったらいい加減プルーストにも手を出したいな。
面白い本あったらコメントやトラックバックで紹介していただけると嬉しいです。

2007年10月15日

ルース・レンデル『死のひそむ家』

死のひそむ家 (創元推理文庫)死のひそむ家 (創元推理文庫)
成川 裕子 ルース・レンデル

東京創元社 1987-09
売り上げランキング : 470640

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風呂の中でちまちま読んでいたレンデルが漸く読了。翻訳ものって苦手なんだけど、これは割合ストーリーの流れがすっと頭に入ってきたので読み易かった。そしてワタシにとってこの手の推理小説は新鮮。犯罪行為時にトリックを駆使するのではなく、その準備段階で小細工を弄して自分を犯人候補の圏外にさせようだなんて小憎らしいなぁ。ある意味犯人は分かりきっているのだけど、どうやってその過程を導き出していくのか追っていく楽しさがあった。他のレンデル作品にも手を出してみようかな、特にシリーズものを。

2007年10月14日

恩田陸『puzzle 』

puzzle (祥伝社文庫)puzzle (祥伝社文庫)
恩田 陸

祥伝社 2000-10
売り上げランキング : 15893
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不可思議な3つの死体を巡るミステリー、と粗筋には書かれてましたがどっちかって言うとファンタジーな人間小説のような気がする。解説で竹本先生も書かれてましたけど島を訪れた2人の検事の心理戦がキモで冒頭に出てくる謎の回答なんて恩田先生的にはどうでもよさげな感じ。ちょっと短すぎて探偵役(?)の春が回答を導き出すプロセスが天才的直感じゃないかと思える節もありましたが雰囲気には概ね満足。出来ればいったん島から帰って調査したりしてもう一度島に戻ってきて種明かし、とかだと舞台装置的には完璧だったんだけどそういう地道な調査とかが似合わない話だったから畳み掛けるような展開になったんだろうなぁ。そこがちょっと残念。しかし謎の死を遂げた3人の死に様があまりにファンタスティックで楽しくなってしまったので良いや。うん、まぁまぁ。

2007年08月13日

服部まゆみ『シメール』

シメールシメール
服部 まゆみ

文藝春秋 2000-05
売り上げランキング : 55062
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『切り裂きジャック〜』のイメージとはかなりかけ離れた本作、こっちが服部先生の本領発揮なんでしょうかね。じっくり読んで熟考すればきっと深層心理に訴えかけるような深いテーマが隠されているのかもしれませんが、ワタシのような浅学非才の徒には「美少年は素晴らしい」ということしか分かりませんでした。以前どこかで読んだものに「美少年が美少年足りうるのは崇拝者あってこそ」という言葉があって印象に残っていたのですが、『シメール』読むと本当その通りだなと思う。崇拝者が「美しい!ブラボー!!」と思えば実際が残念なお顔でも関係ないんだろうな。その辺りが美少年と美少女を分けるところかなぁ。美少女は崇拝者もさることながら少女自信が自分の美しさに自覚的であることが求められるような気がする。自分の美しさに無自覚な美少女ってそういう世界に存在しないか、存在している場合白痴扱いを受けて美少女でありながら普通の少女以下の存在に落ちてしまっている感じで。といっても全然この辺のジャンルには詳しくないので適当なイメージ。耽美は少しかじった辺りで限界です。稲垣足穂の破壊力に完敗。そして『シメール』の感想が全然書けていない。とにかく色々圧倒されました。

2007年07月21日

伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』

アヒルと鴨のコインロッカーアヒルと鴨のコインロッカー
伊坂 幸太郎

東京創元社 2006-12-21
売り上げランキング : 270
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青春小説、と呼びたくなるような爽快感のある話だった。 とあるアパートの今と2年前の住人、1人ずつの視点で語られる同時進行型のストーリーは現在と過去が互いにリンクしながらも何故かしっくりこない。その違和感の謎が解けた瞬間の「あぁ!」って感じはたまらなかった。相変わらず登場人物ひとりひとりに味があって良いなぁ。 ただ伊坂先生なので「どうしようもないやるせなさ」はちゃんとあった。今回はそれが『動物虐待』だったのでちょっとここだけは本気で鬱になったのだけど、このやりきれないくらい気持ちは伊坂作品にはなくてはならないものなのかもしれない。平和でほのぼのしたまま終わらせない毒のようなもの、鬱になるけど無いと淋しい。


ところでこれ映画化されたみたいなんですけど、どんな展開になってるんでしょう。絶対無理じゃないかと思った。

2007年07月20日

阿部和重『ABC戦争―plus 2 stories』

ABC戦争―plus 2 storiesABC戦争―plus 2 stories
阿部 和重

新潮社 2002-05
売り上げランキング : 202233
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短編集。前作よりも読み易くてやや拍子抜けしたが内容はなかなか面白かった。表題作は山形の高校生の間で起こった抗争が巡り廻ってひとりのやくざの死に行き着くというその流れを当時部外者であった「私」が関係者の話を聞きながらまとめていくという展開なのだけど、この流れに「私」の推理と関係者の手記と証言が混ざり、更には「私」のリアルタイムな時間の流れも加わってとんでもない混沌が物語り全体を覆っている。読んでいる最中よりは読後に何度も反芻して楽しめる話ですね。 その他の短編『伯爵夫人の午後のパーティー』『ヴェロニカ・ハートの幻影』はややミステリー調、と言うか夢野久作を髣髴とさせて、夢野先生大好きと言うかもはや崇拝の域に達しているワタシには堪らなく美味しいご馳走小編でした。これは多分買ってしまう。

2007年07月16日

阿部和重『アメリカの夜』

アメリカの夜アメリカの夜
阿部 和重

講談社 2001-01
売り上げランキング : 45559
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久々に日本の純文学(?) 1ページ目からいきなり回りくどい言い方で話を進める男の独白に丸山健二を思い出した。あー、この一息で読み進められない感じ懐かしいなぁ。特に苦手意識を感じなかったためか最後まですんなり読み終えることが出来ました。うん、なかなか面白かったよ。肥大化した自意識に翻弄された結果秋分の日生まれの自分は春分の日的なものと闘う義務があると思い込んだ主人公の滑稽さが椎名林檎や戸川純に傾倒した文系女子の自意識過剰さと重なって何とも言えない気分にはなりましたけど。登場人物は皆サブカルの領域に属する人間なのにオタクに属するワタシが妙な同属嫌悪(ってほどでもないが)を感じるってことはやっぱりオタクとサブカルって似てるのかなー別にどうでも良いことなんですけど。作中で映画を撮っているからなのか、この作品自体が映画っぽい気がした。他の話もこんなんなんだろうか。


ところでこの作品、純文学にカテゴライズされるだけあって多少表現がしつこい上に同じところを何周もする煩わしさはあったけどそれよりも気になったのは文章の書き方。阿部さんがこういう書き方をするのか、それともこの『アメリカの夜』の語り手である「私」がそういうもったいぶった語り口で語る男という設定なのかまだ1作しか読んでないワタシには判じかねますが、この文章がどうにもこうにもワタシの昔書いた読書感想文を思い出させてちょっとアンニュイになった。上手い下手ではなく(当たり前だ)主題の前に重ねて否定を置く方法は昔えらい叱られたんでトラウマスイッチなんですよ。他の作品もこれだったら読み続ける自信がない。

2007年07月14日

伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』『陽気なギャングの日常と襲撃』

陽気なギャングが地球を回す陽気なギャングが地球を回す
伊坂 幸太郎

祥伝社 2006-02
売り上げランキング : 1053
おすすめ平均

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少し前に映画化された作品。番宣でしか見たことなかったので読んでみて自分の思い描いていたイメージとの違いに驚かされた。揃いも揃って駄目駄目で銀行強盗に向かなさそうなひとたちかと思ったら誰も彼もスペシャリストだなんてちょっとときめくなぁ。まぁこれはワタシの単なる思い込みなんですけど。想像していたよりずっと面白く、登場人物それぞれの個性豊かな生き様も良かった。ちょっと映画も見てみたくなったよ。 そして相変わらず伊坂先生らしい話の流れの上手さにしてやられた。やっぱりこの人の書く話大好きだ。たとえ欝にさせられることが多くても読まずにいられない。今回はハッピーエンドで底抜けに明るい話だったのでもう上機嫌で読み終わったよ。4人のギャングにメロメロです。

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