横山秀夫『陰の季節』
陰の季節 横山 秀夫 文藝春秋 2001-10 売り上げランキング : 10307 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
Category : 本/雑誌 のアーカイブ
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オーデュボンの祈り 伊坂 幸太郎 新潮社 2003-11 売り上げランキング : 252 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
しかしラストで城山が桜にボコられるところにはスッキリしたなぁ。正直このシーンのために桜の『善悪には頓着しない』設定があるのかと思ったくらいだ。相変わらず話運びは上手く、会話も軽快さが気持ち良いので一気に読めました。
嵐が丘(上) エミリー・ブロンテ 河島 弘美 岩波書店 2004-02-19 売り上げランキング : 206541 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
一八八八切り裂きジャック 服部 まゆみ 角川書店 2002-03 売り上げランキング : 93876 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
誘惑者 高橋 たか子 講談社 1995-11 売り上げランキング : 687136 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ヴィレット シャーロット ブロンテ Charlotte Bront¨e 青山 誠子 みすず書房 1995-06 売り上げランキング : 447576 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ベルギーのブリュッセルをモデルにした架空の都市ヴィレットで、天涯孤独な中産階級の娘、ルーシー・スノウが生きて悩み恋をして絶望しそれを乗り越えていく過程がこの物語の根幹を成している訳ですが、そのくせシャーロットはルーシーをジェインのようなヒロインらしいヒロインには祭り上げていない。ルーシーが主人公だと知っていたワタシでさえ、冒頭部分を読んだとき彼女は同名の別人かもしくはこの先に急展開があって性格が変わってしまうに違いないと思ったくらいだ。それくらいルーシーの観察眼は自己ではなく他人に向いていて、彼女を通して描き出される様々な人々は生き生きと輝いていた。何て言うかもう、堪らない。これはシャーロットの書いた小説の中でもいちばん自伝的要素が濃いと言われていますが、もし彼女がそのつもりでこれを書いていたのならこの物語における主人公でありながらの脇役感は彼女自身がそれを強く感じていたためなのかなぁと思って切ない気持ちになってしまうのですよ。だから正直ルーシーとムッシュ・エマニュエルの間に、方向性はともかく、特別な絆のようなものが見えたときは嬉しくなった。シャーロットは『ジェイン・エア』以降ロマンチシズムを前面に押し出したものを書くのは気が進まなかったようですが、彼女の恋に悩む男女の描写には物凄く惹き付けられるものがあるのでムッシュとの関係に揺れ動くルーシーを眺めているのはとても楽しかった。まさか終わりがあんなことになるとは予想してなかったけど。あのラストは書き手だけが持ち得る力を存分に発揮された気がした。もっともっとシャーロットにはたくさんの作品を書いて欲しかったよ。
教授 シャーロット ブロンテ Charlotte Bront¨e 海老根 宏 みすず書房 1995-12 売り上げランキング : 455262 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ただ先に『ジェイン・エア』や『シャーリー』を読んでしまった身からするとこの作品は彼女らしい地に足のついた描写、特に恋愛以外の面で発揮される精密さ、が欠けてるかなと思った。特に最期のクリムズワースとフランシスが結婚して一財産を築きイギリスに渡るまでの描写がそこに至るまでの過程とは比べようもないくらい大雑把。それなら結婚するところで止めとく方がらしいのにな、と思った。まぁそういう構成の面も含めて初めて書いた小説っていうのはしっくりきた。タイトルが『教授』であることから考えてこっちの方がよりシャーロットの心情が深く反映されているのかもしれない。
そうそう、この『教授』には未完の作品『エマ』『ウィリー・エリン』が収録されているんですが、これがまた続きの気になる興味深い作品なんですよ。文章量的にもまだプロット段階っぽいこの話を完全な形で読めなかったことが非常に悲しい。美味しいデザートを見せるだけで引っ込められたような気持ちになった。
CLAYMORE 1 (1) 八木 教広 集英社 2002-01 売り上げランキング : 100 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
しかしこのマンガを掲載している月刊ジャンプが廃刊で週刊の方に移るらしいんですが、正直このカラーは週刊に合わないだろう。週ジャン化するクレイモアなんて見たくないし、このままいって打ち切られようものならこの美しい世界観を途中で途切れさせることになってしまうよ。今更ながらファンの嘆きが理解出来てワタシも悲しい。
シャーリー シャーロット ブロンテ Charlotte Bront¨e 都留 信夫 みすず書房 1996-08 売り上げランキング : 383900 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
物語的には男の世界(唯物的)と女の世界(唯心的)なものの同時進行という感じで、その両側に自分の領域を持つ女伯爵のシャーリー・キールダーを軸に時代の動きと彼女の住むフィールドヘッドを巡る動きがあっちへ行ったりこっちへ行ったりしながら一つの流れに収束し、収まるべきところに収まった感があって良かった。ただひとつ、物語自体の経過時間が短いことがちょっと不満でしたが、読み応えのある時代のワンシーンを綿密に書き切ったシャーロットには脱帽。シャーリーとキャロライン、全くタイプの違う女性をそれぞれのらしい在り方で一個性としての強い女性を書いたのも興味深かったです。
ケアリについては前述の通りですが、一応ヒロインについても一言。シャーリーの気難しさは『ジェイン・エア』のロチェスターをより進化させたようで終盤彼女が誰を愛しているのかが分かった後も本当にこのふたりは結婚するのだろうかと思わされる不可解さに満ちていた。まぁ相手がそんなシャーリーに詰られながら屈服させたいとか言ってる変態なのでお似合いだと思いますが割と感情移入のし難い女性だったかな。これはもしかしたら冒頭でシャーロット自身が『ジェイン・エア』のようなロマンスは期待しない方がいい、と言ったそのことにも起因しているのかもしれない。ロマンスよりもリアリズムをより前面に押し出して書こうとした彼女の試みは決して悪くないけれどラストでダダ漏れになるロマンチシズムが彼女を堪らなく可愛く思わせてしまう。シャーロット大好きー
未来日記 (1) えすの サカエ 角川書店 2006-07 売り上げランキング : 6049 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |