2007年06月05日

本/雑誌】 アン・ブロンテ『アグネス・グレイ』

アグネス・グレイアグネス・グレイ
アン ブロンテ Anne Bront¨e 鮎沢 乗光

みすず書房 1995-08
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『ジェイン・エア』に触発されてブロンテ全集を読むことにしました。『ジェイン・エア』と『嵐が丘』以外は手軽に手に入るものではないので図書館で入手。成り行きでまずは末の妹アンの『アグネス・グレイ』から。シャーロットとエミリ程有名ではない彼女の作品に関しては姉妹という括りで全集に入っているのだとばかり思っていましたがとんでもない。度肝を抜かれた。 主人公であるアグネスが家庭教師であるというところは姉の作品と同じであるものの、ジェインが教え子であるアデールと十分な信頼関係を築き上げていたとは正反対にアグネスは雇い主である両親からも教え子である子供たちからも不当なほど蔑まれ、あまつさえ召使にさえも馬鹿にされてしまう。当時の家庭教師という存在がどれほど不当な扱いを受けていたのかがよく分かります。1軒目の時点でもう読んでるこちらはムカムカして仕方がないのにアンは手を緩めずこれでもかこれでもかという酷い仕打ちの数々を連ね上げる。ラストがウェストン氏のプロポーズで本当に良かった。これでアグネスの恋が報われなかったらこの世には神も仏もないのかと思わされるところだ。ハッピーエンドにこんなにホッとしたのも久しぶりでした。 それにしても自身も家庭教師を勤めていたアンのこと、これは半分アンの自伝みたいなものだと思うのですが、だとしたらここまで惨めに自己を見つめて描写する冷静さと観察眼は脅威だ。『ジェイン・エア』にはロチェスター氏への想いと自己の規律で悩み己を叱咤する描写はあれど、アグネスのように不当な仕打ちでプライドを粉々にされるようなことは無い。そんな筆にするのも腹立たしい出来事をひとつひとつ丁寧に書くアンは表現者としての冷静さと描写のリアリティさにおいて姉を上回っていると思いました。ただアグネスが心情を吐露する際、必要以上に己を卑下するところなんかはちょっと姉のシャーロットを彷彿とさせたかな。イヤもうとにかく良かった。ブロンテ姉妹は最高だ。
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