2007年06月15日

本/雑誌】 シャーロット・ブロンテ『教授』

教授教授
シャーロット ブロンテ Charlotte Bront¨e 海老根 宏

みすず書房 1995-12
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シャーロットの死後発表された遺作にして処女作品。しかしなかなかどうして面白かった。語り手であるクリムズワースは男性ではあるけれどシャーロットの書く主人公らしい気難しさと「ある特別の精神」を持っているし、何があっても冷静沈着を友とすることを信条にしている辺りはワタシの可愛いジェインと同じ血を感じる。ワタシの目から見るとちょっと偏屈でうざったそうなこの主人公を「美人ではないが賢い」(これもお得意だ)フランシスが心底愛するようになるってのはとてもシャーロットらしい。クリムズワースがフランシスを探して街を探し回り、墓場で漸く出会えるシーンは堪らなく良かった。

ただ先に『ジェイン・エア』や『シャーリー』を読んでしまった身からするとこの作品は彼女らしい地に足のついた描写、特に恋愛以外の面で発揮される精密さ、が欠けてるかなと思った。特に最期のクリムズワースとフランシスが結婚して一財産を築きイギリスに渡るまでの描写がそこに至るまでの過程とは比べようもないくらい大雑把。それなら結婚するところで止めとく方がらしいのにな、と思った。まぁそういう構成の面も含めて初めて書いた小説っていうのはしっくりきた。タイトルが『教授』であることから考えてこっちの方がよりシャーロットの心情が深く反映されているのかもしれない。


そうそう、この『教授』には未完の作品『エマ』『ウィリー・エリン』が収録されているんですが、これがまた続きの気になる興味深い作品なんですよ。文章量的にもまだプロット段階っぽいこの話を完全な形で読めなかったことが非常に悲しい。美味しいデザートを見せるだけで引っ込められたような気持ちになった。

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