2007年06月11日

本/雑誌】 シャーロット・ブロンテ『シャーリー』

シャーリーシャーリー
シャーロット ブロンテ Charlotte Bront¨e 都留 信夫

みすず書房 1996-08
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アンから再びシャーロットへ。『ジェイン・エア』の次に出されたこの作品は今までのもの(アンも含めて)と勝手が違い過ぎて最初ちょっと戸惑いました。今までの1人称に変えて3人称を、語り手であった主人公は冒頭どころか300ページ近くまで出てこない、おかげでヒロインのシャーリーが出てくるより先にワタシの心はその友人である可愛らしいケアリ(キャロライン)にぞっこんです。ケアリ可愛いよケアリ。あんな打算男のロバートなんかにお前は渡せねぇとかもう気分は既に父。とは言えケアリはロバートに恋をし過ぎて死に掛けるので、この恋が報われなかったらワタシ泣いてたでしょう。ロバート・ムアは個人的には気に入らないけど、ラストのケアリを背後から抱き締めるシーンは予想外で良かった。

物語的には男の世界(唯物的)と女の世界(唯心的)なものの同時進行という感じで、その両側に自分の領域を持つ女伯爵のシャーリー・キールダーを軸に時代の動きと彼女の住むフィールドヘッドを巡る動きがあっちへ行ったりこっちへ行ったりしながら一つの流れに収束し、収まるべきところに収まった感があって良かった。ただひとつ、物語自体の経過時間が短いことがちょっと不満でしたが、読み応えのある時代のワンシーンを綿密に書き切ったシャーロットには脱帽。シャーリーとキャロライン、全くタイプの違う女性をそれぞれのらしい在り方で一個性としての強い女性を書いたのも興味深かったです。

ケアリについては前述の通りですが、一応ヒロインについても一言。シャーリーの気難しさは『ジェイン・エア』のロチェスターをより進化させたようで終盤彼女が誰を愛しているのかが分かった後も本当にこのふたりは結婚するのだろうかと思わされる不可解さに満ちていた。まぁ相手がそんなシャーリーに詰られながら屈服させたいとか言ってる変態なのでお似合いだと思いますが割と感情移入のし難い女性だったかな。これはもしかしたら冒頭でシャーロット自身が『ジェイン・エア』のようなロマンスは期待しない方がいい、と言ったそのことにも起因しているのかもしれない。ロマンスよりもリアリズムをより前面に押し出して書こうとした彼女の試みは決して悪くないけれどラストでダダ漏れになるロマンチシズムが彼女を堪らなく可愛く思わせてしまう。シャーロット大好きー

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