『三月は深き紅の淵を』というタイトルの本にまつわる中編4つからなる物語。本好きの本好きによる本好きのための本、という形容詞がピッタリの本ですね。何しろ中編ひとつひとつがとてもよく出来ていている上に核となる謎「『三月は深き紅の淵を』の正体は?」について複数の答えを提示したまま終わっているのだから。うん、何て言うか『読者』でいることの幸福感を実感できる本ですよ。各中編の主人公たちが掴んだ『三月は深き紅の淵を』の正体のどれが本当なのかをついつい考えてしまったり、文中に散りばめられている本のタイトルに胸をときめかせたり出来るんですから。『チョコレート工場の秘密』なんて本当今すぐにでも読みたいと思ってしまいましたよ。恩田先生がすごいなぁと思うところのひとつはこれだ。