2008年01月03日

本/雑誌】 2007年マイベスト〜本〜

今年出た本ではなく今年読んだ本で印象に残った10冊についてツラツラ書いてみます。


◎疾走 / 重松清

疾走 上 (角川文庫)疾走 上 (角川文庫)
重松 清

角川書店 2005-05-25
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好きなサイトさんの日記で拝見したこの本のタイトルの傍に『兄弟の相克』という文字列を発見し一も二もなく手を出しました。珍しい二人称の文体には最初手こずらされましたが読み進めていくうちにそんなことが気にならないくらい世界観にどっぷり濱ってしまいました。一人の少年のあまりに長く短い一生が突き放したような調子で淡々と語られるのはぞくぞくしますね。欲を言えば兄弟の対決がもう少し欲しいところでしたがあの兄にはそういう甲斐性もないんだろうな。理屈抜きに面白い1冊でした。今年のベスト1に挙げたいくらい。


◎いつもの朝に / 今邑彩

いつもの朝にいつもの朝に
今邑 彩

集英社 2006-03
売り上げランキング : 82197
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今邑彩は元々好きな作家でしたが、この作品は今までにない感動があって良かった。ELTの『恋文』のPVで毎回泣けるくらい割と涙腺緩いワタシですが、このひとの作品に泣かされたのは初めてだ。『失踪』と同じく兄弟の相克をテーマに扱ったものですが、こちらは全体的にソフトな感じ。背景に追っているものはむしろこっちの方が重い筈なのにソフトに感じる理由は兄弟を取り囲む女性たちの存在でしょう。特に兄弟の母親の神っぷりは異常、ラストまでこのひとの存在感が異常すぎて主人公である兄弟が霞んでしまうくらいに。そこがワタシの中で『失踪』に劣る理由かもしれない。もちろん大好きなんだけど。


◎シンセミア / 阿部和重

シンセミア〈1〉 (朝日文庫)シンセミア〈1〉 (朝日文庫)
阿部 和重

朝日新聞社 2006-10
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急に阿部和重に興味を持って片っ端から読んでみたけれどどれもこれも短くて困る。純文だから仕方ないのかもしれないけどもうちょっと長居の読みたいよなーと思っていたらこれがありました。いやぁ分厚いハードカバー2冊組みですよ。もう読み応えありまくり。このひとのは短編でも結構抉られていたのでこの『シンセミア』には後頭部と言わず頭部を万遍なく袋叩きにされたようなショックをいただきました。現実ってこんなに絶望的?と思わず問い掛けたくなるような力の理論と運が悪いとしか言いようのない不幸、今までの作品でも味わった世界が崩壊する感覚が強く深くじっくりと襲ってこられたので参った。芥川賞のアレでロリコン作家と本読みのマイ友人にも思われているのですが残念なことだ。こんなに面白いのに。


◎ラッシュライフ / 伊坂幸太郎

ラッシュライフ (新潮文庫)ラッシュライフ (新潮文庫)
伊坂 幸太郎

新潮社 2005-04
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伊坂幸太郎というお人も2007年に初めて知った作家でした。ゆずさんに「何か貸して」と頼んで貸してもらったのがこの『ラッシュライフ』だったんですが、最初読み終えたときはむしろ似たような作品である恩田先生の『ドミノ』に比べて希望がないし暗いし後味悪くて嫌いだったんですよ。でも他に何冊か伊坂作品を読んで後味の悪さも味わいまくった結果このラッシュライフの終わりに希望を感じられるようになりました。明るくはないんだけど皆最後は前向きなんだなーということが実感できた。ワタシもこういうくたばりぞこないでも前向きの姿勢をもって生きていきたい。伊坂先生は今年も追い続けますよ。


◎高村薫 / 照柿

照柿(上) (講談社文庫)照柿(上) (講談社文庫)
高村 薫

講談社 2006-08-12
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どうでも良い日常の中に爆発の種がある。この作品での起爆装置はひとりの女性だったけど実際ふっと沸いたように起こる小さな不満の連鎖はいついかなる時でも起こり得ることだし、そういう意味では何も特別なことがないだけに怖い話だなぁと思った。ただ不満というか萎える話をすれば合田刑事の存在が相変わらずリリカルで好きなんだけど力が抜ける。合田刑事と言うよりも義兄殿とのやり取りが駄目なんだろうけど。うーん、でも文章はすごく好きなんだ。そんな理由もあって『レディ・ジョーカー』と迷ったけどこっちにした。あっちはラストと言うか終盤でひどいどんでん返しを食らったからな。


◎アグネス・グレイ / アン・ブロンテ

アグネス・グレイ (ブロンテ全集 8)アグネス・グレイ (ブロンテ全集 8)
アン ブロンテ Anne Bront¨e 鮎沢 乗光

みすず書房 1995-08
売り上げランキング : 542511

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シャーロットの未読も今年は読んだけど、甘く見てたアンに横っ面叩かれたのでこれで。冷静な観察眼とリアリティを追及する描写には圧倒されました。ワタシの今年の目標はブロンテ姉妹の全集を揃えることです。彼女らの作品を常に手元に置いておきたい。


◎化物語 / 西尾維新

化物語(上) (講談社BOX)化物語(上) (講談社BOX)
西尾 維新 VOFAN

講談社 2006-11-01
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西尾維新もよく読んだので作家括りでひとつ。このひとの狙い過ぎるくらい狙った世界観は逆に清々しいと思う。文体やキャラクターからラノベ扱いされるのは仕方のないことだろうけど、ここまでフルスロットルで何かを振り切った文章というのは書けそうで書けない気がするんだよなぁ。おかげでほとんどの作品を読んでしまった。
そのうちで『化物語』を選んだのはこの話が冒頭すごくつまらなかったから。なんか全然読み進める気にならなくて放っちゃおうかなーと思ったくらいだった。そこを我慢して読み続けていたら、下巻に入る頃にはしっかりはまってしまっていた。たとえ内容が微妙でも(失礼)反復することによりそれが自分の中に馴染んでいくということを実感した1冊です。そういう意味ではシリーズものが強いのも分かる。


◎まひるの月を追いかけて / 恩田陸

まひるの月を追いかけて (文春文庫 お 42-1)まひるの月を追いかけて (文春文庫 お 42-1)
恩田 陸

文藝春秋 2007-05
売り上げランキング : 148276
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恩田先生も相変わらず色々読んでますが未だコンプには至らず。どれ読んだのか分からなくなっているせいもあるんですけど(『禁じられた楽園』なんて間違えて3回読んだ)、作品自体も多いですよね。そんなわけで慌てず文庫化されたものから読んでます。
そんな恩田作品で今年読んだ中のベストはこれ。失踪した異母兄と彼を探す恋人(の振りした友人)に連れて行かれる『私』、とにかくこの友人がすごく良かったなぁ。決して善人ではないし、自分の目的のために『私』も平気で騙しちゃったりしてるんだけど本人自身も余裕が無いところがひとの複雑さを感じさせてくれる。そういう意味ではラストよりも彼女が消える辺りが印象的だった。繰り返し読みたい1冊だ。


◎反逆 / 遠藤周作

反逆〈上〉 (講談社文庫)反逆〈上〉 (講談社文庫)
遠藤 周作

講談社 1991-11
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駆け込みで時代劇。年末にはまったゲームの影響で戦国時代を扱った小説が読みたいとゆずさんに話したら教えてくれたのがこの本。彼女お気に入りの荒木村重をメインに据えた小説だそうで、荒木のあの字も知らない自分には大変新鮮でした。遠藤周作先生の文章はもちろん好きだしそういう意味でも読みやすく、また合戦知識がヅラヅラと書かれている訳でもないので戦国初心者にも優しい。荒木村重の奥方がまた素敵な女性で夫婦のやり取りを細やかに書いているところが遠藤先生っぽくて良いなぁ。ゆずさんがオススメするだけある。
しかしこの小説に出てくる信長公はマジでここまで凄いの?っていうくらいの超王様なんですが、もし実際にこんなんでそれを明智光秀が殺したとしたら明智もかなりの化け物だ。まぁ暗殺には諸説あるようなので明智ひとりで殺したとは言えないのかもしれないけどなかなか戦国時代も面白い時代なんですね。これまで全く興味がなかったので(ワタシは鎌倉幕末専門)、今年はちょっと手を出してみようかと思います。


◎一八八八 切り裂きジャック / 服部まゆみ

一八八八切り裂きジャック (角川文庫)一八八八切り裂きジャック (角川文庫)
服部 まゆみ

角川書店 2002-03
売り上げランキング : 187304
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これまたゆずさんに「何か面白いのかしてー」と頼んで貸してもらった1冊。切り裂きジャックといえば数多くの作品を生み、色々な小説のモチーフにもなっていますがこれは当時のイギリスに滞在した日本人視点で語られていて面白かった。既に感想書いているので特に語ることはないですが、このあと服部先生の本を色々と読んでみて『シメール』でぶっ飛んだことは書き留めておきたい。ほんとビックリした。


他にも色んな楽しい本との出会いがありましたがそれは追々書いていきます。ゆずさん紹介の本が多いので今年も紹介してもらおう。よろしくね。
今年は時代小説とあと日本の純文学、あとラノベを強化したい。余裕があったらいい加減プルーストにも手を出したいな。
面白い本あったらコメントやトラックバックで紹介していただけると嬉しいです。