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2007年06月30日

本/雑誌】 伊坂幸太郎 『魔王』

魔王魔王
伊坂 幸太郎

講談社 2005-10-20
売り上げランキング : 17966
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『魔王』『呼吸』の2編収録ですが実質的にはひとつの物語と考えて良い作品。『魔王』主人公の安藤が口癖のように言う「考えろ考えろ」という痛烈なメッセージとカリスマ的な魅力を備えた犬養という政治家の強い主張から風刺文学とかそういった捉え方をされている気がしますが、ワタシは安藤と潤也君の互いを思う兄弟愛にちょっと感動してしまった。安藤が死ぬ直前に潤也君にはこれから幸せなことがあって良いんじゃないかと空に問い掛けるくだりや『呼吸』で潤也君が死んだくらいで兄貴は俺を見放さないって言うくだりがもう堪らなかった。『重力ピエロ』の泉水と春も良かったけれど、ワタシはこの兄弟の方が好きだ。これ続編出来そうな感じなんですけどないのかなぁ。


あとこの話って『犬養=魔王』で、それに気付いているのが安藤だけという感じで物語が進んでいくんだと思うんですが、肝心の犬養と安藤は1度も言葉を交わしてないんだね。それどころか犬養は安藤のことを知らない。真実に気付いても個人も力じゃどうにも出来ない無力さを感じて、ちょっとそこだけはアンニュイでした。


ちなみにこれ今『週間サンデー』で設定を高校生に変えたものが連載されてますが結構面白いです。原作読んでると特に面白いのでマンが読んでる方も原作は読んだ方が良いと思います。お節介。

2007年06月29日

本/雑誌】 伊坂幸太郎『重力ピエロ』

重力ピエロ重力ピエロ
伊坂 幸太郎

新潮社 2006-06
売り上げランキング : 1289
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重いバックグラウンド背負っている子はいるし、胸糞悪いヤツもいるし、明らかなハッピーエンドってでもなかったのに読後に感じたいちばんの感想は「良い話だったなぁ」でした。兄弟ものといえばまず相克関係なふたりが浮かぶワタシにとって泉水と春のやり取りは最高に心和んだよ。春はもちろん良い子だけど泉水超良いお兄ちゃんだ。良いお兄ちゃん過ぎて道を踏み外しそうなところがまた良かった。お父さんもお母さんも素敵だったし、素晴らしいひとたちってのはこういう風に何気ない日常を謳歌していきているんだろうなぁ。この家族のシーンだけは本当に癒された。心から癒されたよ。


結末に関しては決して良いことをしたとは言えないんだけど、それでも誰かが(基本的にこの件に関する被害者兼加害者は春だから春かな)救われたのなら良いのかもと思った。法律も神も救ってくれないなら自分で自分を救わなければならないのが今の世の中かもしれないしね。この話、そういう視点で読むと切なくて死にたくなる、のでワタシは家族愛に浸って読むよ。

2007年06月28日

本/雑誌】 漆原友紀『蟲師』

蟲師 (5)蟲師 (5)
漆原 友紀

講談社 2004-10-22
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ちょっと前にアニメでやってて気になってはいたんですが買うほどでもないと思っていたので旅先のホテルにあったこれをここぞとばかりに読破。旅行先でやることじゃないね。でもなかなか面白かったです。イメージ的には波津先生の『雨柳堂〜』っぽいのかと思ってたらそうでもなくて、主人公のギンコは見た目よりもずっと泥臭い人間(?)で話はめでたしめでたしで終わらないものが多くて読みながら軽く鬱になった。既に世界が構築されている場合、たとえそれが不幸としか言いようのない形でも壊されることは決して幸福じゃないんだということを見せ付けるような橋から落ちた女の子の話や毎日死んで生き返る女の子の話は本当に切ない。やっぱハッピーエンドが良いですよ。なので錆の女の子の話は好きだった。時間が足りなくて5巻までしか読めなかったので、今度機会を見て残りも読みたい。ところでギンコは言われているようにワンピースのサンジにそっくりですね。サンジスキーなのでギンコも好きです。

2007年06月26日

本/雑誌】 横山秀夫『陰の季節』

陰の季節陰の季節
横山 秀夫

文藝春秋 2001-10
売り上げランキング : 10307
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『半落ち』がイマイチだったのであまり期待せずに読んだんですが、これは面白かった。いやぁこのひと短編の方が向いてるんじゃないの。警察は警察でも管理部門のひとに焦点を当てた4つの作品はどれもスッキリとしていて読み易かった。何て言うか、こう中間管理職の哀愁がね、もう堪らない。後味が良いとは言えない話ばっかりだったけど、妙に清々しい諦観が個人的には気に入りました。あと全編通して出てくる二渡さんが本人視点と他人視点では別人のように見えたのが面白い。格好良く見えても中の人はいっぱいいっぱいなんだなーとちょっと微笑ましくなった。所詮ワタシはミーハーだ。

2007年06月24日

フード】 FUUUU!

070624_1452~001.jpg
歌舞伎町にあるスープカリーのお店。出てきたナンの大きさにビックリした。ワタシが頼んだのは『ガンジーセット』というカリー1種類、タンドールチキン1/2、カップライス、ナン、サラダ、デザートというなかなかてんこもりなセット。てんこ盛りだけあって色々なものを少量ずつというコンセプトが伺えたのですがとにかくナンの大きさだけが突出していた。しかしそのナンが焼き立てで、バターの焼けた香ばしい匂いが堪らなく食欲をそそったので軽く1枚食べ切ってしまいました。カレーは大好きなキーマカレーを選びましたがこれもまぁ普通に美味しかった。タンドリーチキンは何だろう、香辛料の関係かちょっと普段食べる鶏とは違う味でこれまた美味しかった。ただその鶏の付け合せに出ていた和え物みたいなのが辛くてこれだけはちょっと次回は遠慮したい。カレーと辛さの次元が違ったんだよなぁ。とにかくナンが大きくて美味しかったのが嬉しかった。次行くときは売りになっているスープカリーにチャレンジしてみたい気持ちでいっぱいです。

URL:http://www.metro-net.co.jp/fuuuu/index.htm

本/雑誌】 伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』

オーデュボンの祈りオーデュボンの祈り
伊坂 幸太郎

新潮社 2003-11
売り上げランキング : 252
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地図に載っていない島、喋るカカシ、嘘しか言わない絵描き、死刑執行人。冒頭部分で出てくるこのキーワードだけ見てどんな中2病設定なファンタジーかと思ったが、実際は読めば読むほど世知辛い現実が待ち受けているミステリーでした。そして非常に良く出来ている。未来を告げる神秘的なカカシが何故自分の死を予見出来なかったのかという謎を主人公がといたシーンは最高。とは言えその動機を考えて、ちょっとブルーにさせられた。伊坂先生好きだけど、ホント読む度世知辛い気持ちになるんだよ!


しかしラストで城山が桜にボコられるところにはスッキリしたなぁ。正直このシーンのために桜の『善悪には頓着しない』設定があるのかと思ったくらいだ。相変わらず話運びは上手く、会話も軽快さが気持ち良いので一気に読めました。

2007年06月23日

本/雑誌】 エミリ・ブロンテ『嵐が丘』

嵐が丘(上)嵐が丘(上)
エミリー・ブロンテ 河島 弘美

岩波書店 2004-02-19
売り上げランキング : 206541
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ブロンテ姉妹ラストになってしまったエミリ。一般的にはこれがいちばん高評価らしいですね。確かに畳み掛けるような展開と描写にはものすごい臨場感を感じた。エミリすごい。シャーロットやアンが割とエンジンのかかりの遅い物語展開だとしたらエミリは即全開、そのまま終盤までフルスロットルで息切れ無しって感じ。ま、前半のキャサリン死去までに比べると後半は盛り上げ役がヒースクリフしかいなかったせいか温い気はしましたけど。でも始めっから終わりまで読者を掴んで放さない物語の濃さには恐れ入った。 前に読んだときは「ヒースクリフあぶねぇなー」くらいの印象しかなかったんですが、今読むと怖いのはキャサリンだ。ヒースクリフはただのドM。自分にしか分からない価値観でヒースクリフではなくエドガーと結婚し、それでもヒースクリフを昔同様に愛して奴等を仲違いさせた挙句、「2人が私を追い詰めて殺すんだわ」と訳の分からない錯乱を起こし男共を恐慌状態に陥れる。もう最高だ。こういう女に人生滅茶苦茶にされてみたい。うん、嘘。 なんにせよキャサリンのキレっぷりとイザベラの転落ぶりは一度は見ておくべきだと思いますよ。あ、あとヒースクリフの息子の腐れっぷりもだ。アイツは豆腐の角で頭ぶつけて死ぬタイプ。

本/雑誌】 服部まゆみ『一八八八 切り裂きジャック』

一八八八切り裂きジャック一八八八切り裂きジャック
服部 まゆみ

角川書店 2002-03
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これもゆずさんのオススメ。「切り裂きジャック」ものですが、リアルタイムな英国で語り手が日本人というのはちょっと新鮮で面白かった。ただ彼は異邦人という意識が強いせいか事件へののめり込みが足らなくて、読んでるこちらはヤキモキしましたよ。なので事件の謎を解き明かすと言うよりも事件の起きている現場で恋に自分におろおろしてる留学生の自分探しって感じですね。こういうの大好きですけど。そして友人鷹原の超人振りが凄くて笑ってしまった。駄目な語り部柏木を補うため事件に深く関わらせようとしたからこんな感じになったんでしょうけど、ここまでスーパーマンだといっそ清々しくて憧れる。ラブ。

2007年06月21日

本/雑誌】 高橋たか子『誘惑者』

誘惑者誘惑者
高橋 たか子

講談社 1995-11
売り上げランキング : 687136
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ひょんなことから過去の自殺者について調べ始めてしまい行き着いたのがこの本。かの有名な三原山連鎖自殺の端緒となった2人の女学生、彼女らに付き添った少女を主人公に据えた名作です。多少の設定は変えているものの実際に起こった出来事はほぼそのままに1人目の自殺の前から始まって2人目が死ぬまでを主人公視点でねっとりと描き出しています。もうとにかく主人公の友人2人が怖い。主人公の淡々とした視点も怖いけど、自分が死ぬために主人公を利用しなければいられないその一本気な少女特有のナルシズムがホント怖かった。特に1人目はそんな自分のナルシズムに翻弄されながらも主人公が救ってくれないことに「あたしはあなたのせいで死ぬ」と言い切っちゃうんだから傲慢だよなぁ。でもそんな自己愛に満ちた親友2人の死を受け止めて山を降りていく主人公がやっぱりいちばん怖いのかもしれない。高橋女史の筆でこの主人公の行く末を見たかったな。多分実際とは違うことになってるんだと思う。

2007年06月19日

本/雑誌】 シャーロット・ブロンテ『ヴィレット』

ヴィレットヴィレット
シャーロット ブロンテ Charlotte Bront¨e 青山 誠子

みすず書房 1995-06
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ついにシャーロットを読み終えた。ああああ、今とっても淋しい。可愛らしい8歳ポーリーナの言葉を借りるなら「シャーロット、あたち、あなたのこととても好きよ!」って叫びたいくらいシャーロットが大好きな自分に気付いてもう何て言うか感無量。『ヴィレット』はシャーロットが書き終えた最後の完結小説になるのですが、これがまた『教授』『ジェイン・エア』そして『シャーリー』ときて最後を締め括るのに相応しい素晴らしい小説でした。『ジェイン・エア』でさえ泣かなかったのに、『ヴィレット』の最後では軽く涙が出たよ。マジで。自己洞察の冷静さに措いて姉は妹(アン)に劣ると言ったあの言葉を撤回したい。『ヴィレット』におけるルーシーの描写は本当に、読んでいるこちらの心が凍るんじゃないかと言うほど、冷徹で容赦がなかった。

ベルギーのブリュッセルをモデルにした架空の都市ヴィレットで、天涯孤独な中産階級の娘、ルーシー・スノウが生きて悩み恋をして絶望しそれを乗り越えていく過程がこの物語の根幹を成している訳ですが、そのくせシャーロットはルーシーをジェインのようなヒロインらしいヒロインには祭り上げていない。ルーシーが主人公だと知っていたワタシでさえ、冒頭部分を読んだとき彼女は同名の別人かもしくはこの先に急展開があって性格が変わってしまうに違いないと思ったくらいだ。それくらいルーシーの観察眼は自己ではなく他人に向いていて、彼女を通して描き出される様々な人々は生き生きと輝いていた。何て言うかもう、堪らない。これはシャーロットの書いた小説の中でもいちばん自伝的要素が濃いと言われていますが、もし彼女がそのつもりでこれを書いていたのならこの物語における主人公でありながらの脇役感は彼女自身がそれを強く感じていたためなのかなぁと思って切ない気持ちになってしまうのですよ。だから正直ルーシーとムッシュ・エマニュエルの間に、方向性はともかく、特別な絆のようなものが見えたときは嬉しくなった。シャーロットは『ジェイン・エア』以降ロマンチシズムを前面に押し出したものを書くのは気が進まなかったようですが、彼女の恋に悩む男女の描写には物凄く惹き付けられるものがあるのでムッシュとの関係に揺れ動くルーシーを眺めているのはとても楽しかった。まさか終わりがあんなことになるとは予想してなかったけど。あのラストは書き手だけが持ち得る力を存分に発揮された気がした。もっともっとシャーロットにはたくさんの作品を書いて欲しかったよ。

2007年06月18日

CD/DVD】 追悼 坂井泉水:5『OH MY LOVE』

OH MY LOVEOH MY LOVE
ZARD 坂井泉水 明石昌夫

曲名リスト
1. Oh my love
2. Top Secret
3. きっと忘れない
4. もう少し あと少し…
5. 雨に濡れて
6. この愛に泳ぎ疲れても
7. I still remember
8. If you gimme smile
9. 来年の夏も
10. あなたに帰りたい

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大ヒットした5枚目。『HOLD ME』と並んで好きなアルバムです。タイトルトラックでもある1曲目『Oh my love』の明るく爽やかな導入から(歌詞はさておき)透明感溢れる曲調が全体を通して流れていて大変癒される。泉水ちゃんの暗い詞でも無理矢理感の漂う高音に軽く萌えもいただきつつ『来年の夏も』までの流れはもう文句なしにハッピーなアルバム。そしてラストにいきあり場違いな『あなたに帰りたい』という個人的にはクリティカルなコンボです。最後の1曲だけでアルバムに漂う雰囲気を吹き飛ばすなんて格好良過ぎる。まぁワタシがこの『あなたに帰りたい』をこよなく愛しているせいだとは思うのですけどね。『来年の夏も』『あなたに帰りたい』を連続で何度聴いたことだろう。最後の最後でひっくり返すようなこの曲順には爽快感を感じました。

2007年06月17日

CD/DVD】 追悼 坂井泉水:4『揺れる想い』

揺れる想い揺れる想い
ZARD 坂井泉水 明石昌夫

曲名リスト
1. 揺れる想い
2. Season
3. 君がいない(B-version)
4. In my arms tonight
5. あなたを好きだけど
6. 負けないで
7. Listen to me
8. You and me(and・・・)
9. I want you
10. 二人の夏

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大ヒットした『負けないで』収録の4枚目。殆どの楽曲を織田さんと栗林さんが担当しているためかアルバム全体の雰囲気にすっきりしたものがある。泉水ちゃんの歌唱もほぼ完成され、良い意味でも悪い意味でも曲に感情の起伏を感じなくなった。『揺れる想い』や『Season』辺りはそんな彼女の声を十二分に活かした良質のポップスになっていると思う。あと『Listen to me』がコーラスの所為かアルバムの中でひたすら異彩を放っているのがちょっと楽しい。個人的に好きなのは『I want you』ですが、アルバムとしてはそれほど好きではないかな。

2007年06月15日

本/雑誌】 シャーロット・ブロンテ『教授』

教授教授
シャーロット ブロンテ Charlotte Bront¨e 海老根 宏

みすず書房 1995-12
売り上げランキング : 455262

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シャーロットの死後発表された遺作にして処女作品。しかしなかなかどうして面白かった。語り手であるクリムズワースは男性ではあるけれどシャーロットの書く主人公らしい気難しさと「ある特別の精神」を持っているし、何があっても冷静沈着を友とすることを信条にしている辺りはワタシの可愛いジェインと同じ血を感じる。ワタシの目から見るとちょっと偏屈でうざったそうなこの主人公を「美人ではないが賢い」(これもお得意だ)フランシスが心底愛するようになるってのはとてもシャーロットらしい。クリムズワースがフランシスを探して街を探し回り、墓場で漸く出会えるシーンは堪らなく良かった。

ただ先に『ジェイン・エア』や『シャーリー』を読んでしまった身からするとこの作品は彼女らしい地に足のついた描写、特に恋愛以外の面で発揮される精密さ、が欠けてるかなと思った。特に最期のクリムズワースとフランシスが結婚して一財産を築きイギリスに渡るまでの描写がそこに至るまでの過程とは比べようもないくらい大雑把。それなら結婚するところで止めとく方がらしいのにな、と思った。まぁそういう構成の面も含めて初めて書いた小説っていうのはしっくりきた。タイトルが『教授』であることから考えてこっちの方がよりシャーロットの心情が深く反映されているのかもしれない。


そうそう、この『教授』には未完の作品『エマ』『ウィリー・エリン』が収録されているんですが、これがまた続きの気になる興味深い作品なんですよ。文章量的にもまだプロット段階っぽいこの話を完全な形で読めなかったことが非常に悲しい。美味しいデザートを見せるだけで引っ込められたような気持ちになった。

2007年06月13日

本/雑誌】 八木 教広『CLAYMORE 』

CLAYMORE 1 (1)CLAYMORE 1 (1)
八木 教広

集英社 2002-01
売り上げランキング : 100
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弟がアニメを気に入って買ってきたので読ませてもらいました。今週の頭くらいからチョビチョビ読んではいたんですが、休みに入ってようやく12巻まで読み終えました。女の子大好きなワタシにとっては出てくる登場人物の8割が女の子という天国のようなマンガです。そして結構容赦無い。ここはガチ!って感じの女の子以外は皆死ぬ。もうバタバタ死ぬ。ワタシのお気に入りもどんどん死んだ。大雑把な物言いですがクレイモアが女の子しかなれないっていう設定がもうなんというか堪らないのだと思う。これが男だったら戦って死ぬというのはある種王道というか、まぁ仕方ないよなという気持ちになるのだが女の子だからなぁ。それも皆少女と言って良い外見なのでなんでこんな娘たちを戦わせにゃならんのだという仄かな憤りも生まれてしまって、しかもそこに萌えてしまうのだからワタシも業が深い。 この話の何とも言えないもどかしさは他にもあって、主人公クレアが追う仇とも言える人物がラスボスではないのですよ。ついでにクレア弱いし。確かに主人公補正は掛かっているけどそれはワタシが読み手だからそう思えるのであって、物語上はクレアは弱くて役に立たないし仇と狙う一本角の化け物は最強じゃない。物語の中心に主人公がいるのではなく、物語の中に主人公が取り込まれている、このパターンはなかなか深くて良いと思いました。まだ連載途中だけど終わりがどういう形になるのかとても興味深いマンガですね。

しかしこのマンガを掲載している月刊ジャンプが廃刊で週刊の方に移るらしいんですが、正直このカラーは週刊に合わないだろう。週ジャン化するクレイモアなんて見たくないし、このままいって打ち切られようものならこの美しい世界観を途中で途切れさせることになってしまうよ。今更ながらファンの嘆きが理解出来てワタシも悲しい。

2007年06月11日

本/雑誌】 シャーロット・ブロンテ『シャーリー』

シャーリーシャーリー
シャーロット ブロンテ Charlotte Bront¨e 都留 信夫

みすず書房 1996-08
売り上げランキング : 383900

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アンから再びシャーロットへ。『ジェイン・エア』の次に出されたこの作品は今までのもの(アンも含めて)と勝手が違い過ぎて最初ちょっと戸惑いました。今までの1人称に変えて3人称を、語り手であった主人公は冒頭どころか300ページ近くまで出てこない、おかげでヒロインのシャーリーが出てくるより先にワタシの心はその友人である可愛らしいケアリ(キャロライン)にぞっこんです。ケアリ可愛いよケアリ。あんな打算男のロバートなんかにお前は渡せねぇとかもう気分は既に父。とは言えケアリはロバートに恋をし過ぎて死に掛けるので、この恋が報われなかったらワタシ泣いてたでしょう。ロバート・ムアは個人的には気に入らないけど、ラストのケアリを背後から抱き締めるシーンは予想外で良かった。

物語的には男の世界(唯物的)と女の世界(唯心的)なものの同時進行という感じで、その両側に自分の領域を持つ女伯爵のシャーリー・キールダーを軸に時代の動きと彼女の住むフィールドヘッドを巡る動きがあっちへ行ったりこっちへ行ったりしながら一つの流れに収束し、収まるべきところに収まった感があって良かった。ただひとつ、物語自体の経過時間が短いことがちょっと不満でしたが、読み応えのある時代のワンシーンを綿密に書き切ったシャーロットには脱帽。シャーリーとキャロライン、全くタイプの違う女性をそれぞれのらしい在り方で一個性としての強い女性を書いたのも興味深かったです。

ケアリについては前述の通りですが、一応ヒロインについても一言。シャーリーの気難しさは『ジェイン・エア』のロチェスターをより進化させたようで終盤彼女が誰を愛しているのかが分かった後も本当にこのふたりは結婚するのだろうかと思わされる不可解さに満ちていた。まぁ相手がそんなシャーリーに詰られながら屈服させたいとか言ってる変態なのでお似合いだと思いますが割と感情移入のし難い女性だったかな。これはもしかしたら冒頭でシャーロット自身が『ジェイン・エア』のようなロマンスは期待しない方がいい、と言ったそのことにも起因しているのかもしれない。ロマンスよりもリアリズムをより前面に押し出して書こうとした彼女の試みは決して悪くないけれどラストでダダ漏れになるロマンチシズムが彼女を堪らなく可愛く思わせてしまう。シャーロット大好きー

2007年06月10日

本/雑誌】 えすのサカエ『未来日記』

未来日記 (1)未来日記 (1)
えすの サカエ

角川書店 2006-07
売り上げランキング : 6049
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ネットの評判とサイトの立ち読みに興味を惹かれて購入。いやぁ、ヒロイン由乃の破壊力が思った以上で参りましたよ。何だこのクレイジーガールは。狂信的なほどの雪輝への愛と彼以外への無関心振りにワタシが由乃に惚れそうです。恋に一直線な乙女は大変可愛らしいものですが、彼女のそれは愛情を向けられる本人にとっては恐怖以外の何物でもないと思うと報われない彼女が可哀想だなぁと思ってしまう程度には由乃が大好きです。とはいえ自分が雪輝の立場になりたいかといえばそれは願い下げですが(チキン) 10分おきに観察日記つけられるほどの愛情は持て余しちゃうよなーでも由乃のキレっぷりは傍から見ていると本当に可愛くて応援したくなるので熱意のこもった目で見つめていたい。 そんな由乃への愛ばかりが先走りそうになるこの『未来日記』ですが、ストーリーもなかなか面白くて続きが気になります。最終的に残るのは雪輝と由乃になるのかな。個人的には4thのひとの内面にドロドロしたものがあってくれると良いなぁと思ってます。ただの良いひとでは終わらないと思ってるけど。

CD/DVD】 追悼 坂井泉水:3『forever you』

forever youforever you
ZARD 坂井泉水 明石昌夫

曲名リスト
1. 今すぐ会いに来て
2. ハイヒール脱ぎ捨てて
3. forever you
4. もう逃げたりしないわ 想い出から
5. あなたを感じていたい
6. 気楽に行こう
7. I'm in love
8. こんなにそばに居るのに
9. Just believe in love
10. 瞳そらさないで

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1995年リリースの6枚目。これ以降もヒットシングルはいくつか出ていますがZARD全盛期最後のアルバムという印象が強い。とは言えミリオンヒットと言えるシングルはなく全体的にはまったりとした感じ。1曲目の『今すぐ会いに来て』のイントロもなく泉水ちゃんの軽やかな声で始まる唐突感がとても好きです。アップテンポにしろバラードにしろZARDはイントロが結構派手なイメージあるのでこれはちょっと異色ですね。サビの高音が苦しそうなところが非常に萌えでした。泉水ちゃんらしからぬと言えば7曲目の『I'm in love』もそうだ。サビの無理矢理な弾け感がGIZAの若い娘がやるなら違和感無いんでしょうが、泉水ちゃんがやるとどうしてもぎこちなさが浮かんできてしまう。それはワタシの中の坂井泉水に躍動感というか生命エネルギーの迸る強さが感じられないからなんだろうな。どんな悲痛な曲でも喜びに満ち溢れた曲でも平坦な声で歌う妙な冷静さを愛してます。でも無理してる感の漂う曲は坂井泉水萌え視点からすると正直堪りませんね。

2007年06月09日

本/雑誌】 アン・ブロンテ『ワイルドフェル・ホールの住人』

ワイルドフェル・ホールの住人ワイルドフェル・ホールの住人
アン ブロンテ Anne Bront¨e 山口 弘恵

みすず書房 1996-02
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『アグネス・グレイ』に心臓打ち抜かれた勢いでもう一つのアン作品である『ワイルドフェル・ホールの住人』へ突入。こちらは600ページ超の長編でかなり読み応えでしたが、飽きさせない展開にもう夢中になって読んでました。アンのリアリズムは『アグネス・グレイ』で厭と言うほど理解していたんですけどこちらはそれ以上だな。行間から「馬鹿は一生馬鹿」「馬鹿に悔い改めるという言葉は無い」という彼女の主張が滲み出てくるような、ヒロインであるヘレンの夫ハンディンドン氏に対する描写が特に凄い。これでもかこれでもかというほど彼の愚行を書き連ね、最後の最後まで彼を悔い改めさせようとはしない残酷なほどの現実。どこまでも冷静に書き進めるアンを想像して背筋がぞくぞくしちゃいましたよ。ところでこのハンディントン氏の最期、ヘレンがどれほど熱心に神への祈りを勧めてもそれを受け容れようとしない無理解さに芥川の『六の宮の姫君』を思い出した。どちらも周りがどれだけ訴えても本人にその意思が無いのだから無駄だなという思いにさせられる話だ。 とは言えハンディントン氏とヘレンの出来事はこの長い話のほんの一幕でしかなく(ある種重大な一幕ではあるが)、ハンディントン氏の死によって主人公ギルバートが何でヘレンと結ばれたのかはかなり不思議。氏ほど酷くはないけれどギルバートだって大した男じゃない気がするけどなーもうひとりの求婚者とどう違うのか正直ワタシには分からなかったよ。まぁ締めが「みんな幸せに暮らしました」なので良しとしよう。 しかしアグネスにしろヘレンにしろアンの書くヒロインの頑固さにはホントビックリさせられる。アンはそんな感じだったのかなぁ。もっと彼女の作品を読んでみたかった。29歳なんて若過ぎるよ。

2007年06月05日

本/雑誌】 アン・ブロンテ『アグネス・グレイ』

アグネス・グレイアグネス・グレイ
アン ブロンテ Anne Bront¨e 鮎沢 乗光

みすず書房 1995-08
売り上げランキング : 599860

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『ジェイン・エア』に触発されてブロンテ全集を読むことにしました。『ジェイン・エア』と『嵐が丘』以外は手軽に手に入るものではないので図書館で入手。成り行きでまずは末の妹アンの『アグネス・グレイ』から。シャーロットとエミリ程有名ではない彼女の作品に関しては姉妹という括りで全集に入っているのだとばかり思っていましたがとんでもない。度肝を抜かれた。 主人公であるアグネスが家庭教師であるというところは姉の作品と同じであるものの、ジェインが教え子であるアデールと十分な信頼関係を築き上げていたとは正反対にアグネスは雇い主である両親からも教え子である子供たちからも不当なほど蔑まれ、あまつさえ召使にさえも馬鹿にされてしまう。当時の家庭教師という存在がどれほど不当な扱いを受けていたのかがよく分かります。1軒目の時点でもう読んでるこちらはムカムカして仕方がないのにアンは手を緩めずこれでもかこれでもかという酷い仕打ちの数々を連ね上げる。ラストがウェストン氏のプロポーズで本当に良かった。これでアグネスの恋が報われなかったらこの世には神も仏もないのかと思わされるところだ。ハッピーエンドにこんなにホッとしたのも久しぶりでした。 それにしても自身も家庭教師を勤めていたアンのこと、これは半分アンの自伝みたいなものだと思うのですが、だとしたらここまで惨めに自己を見つめて描写する冷静さと観察眼は脅威だ。『ジェイン・エア』にはロチェスター氏への想いと自己の規律で悩み己を叱咤する描写はあれど、アグネスのように不当な仕打ちでプライドを粉々にされるようなことは無い。そんな筆にするのも腹立たしい出来事をひとつひとつ丁寧に書くアンは表現者としての冷静さと描写のリアリティさにおいて姉を上回っていると思いました。ただアグネスが心情を吐露する際、必要以上に己を卑下するところなんかはちょっと姉のシャーロットを彷彿とさせたかな。イヤもうとにかく良かった。ブロンテ姉妹は最高だ。

2007年06月04日

CD/DVD】 追悼 坂井泉水:2『君とのDistance』

amazonのミュージックランキングが相変わらずカオスだ。気持ちは分かるけども。

君とのDistance君とのDistance
ZARD

曲名リスト
1. 夏を待つセイル(帆)のように
2. サヨナラまでのディスタンス
3. かけがえのないもの
4. 今日はゆっくり話そう
5. 君とのふれあい
6. セパレート・ウェイズ
7. Last Good-bye
8. 星のかがやきよ
9. 月に願いを
10. あなたと共に生きてゆく
11. I can’t tell
12. good-night sweetheart
13. 君と今日の事を一生忘れない ※〈デジパック仕様〉

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2005年にリリースされた11枚目のオリジナルアルバム。バラード寄りの曲が多いためか全体的に落ち着いていて泉水ちゃんに無理させてる感が無いのが寂しい。歌詞も現在進行形の幸せが強調されたものが大半でパンチが足りない。前作でもそうでしたが、作曲の殆どが愛果先生のため今までのZARDとは音の立ち位置がちょっと違って面白い。特に『セパレート・ウェイズ』辺りは囁くように歌う泉水ちゃんが新鮮で良かった。ちなみにアルバムでいちばん好きだったのは『君と今日の事を一生忘れない』、当時は『永遠』のような壮大さが良いなぁとか『世情』っぽさを感じるとかそんなことしか思っていなかったけれど、これが最後のオリジナルアルバムのラストを飾る曲だと思うとちょっとした葬送曲のようだ。本人にそんな気は全く無かったと思うけど、偶然は恐ろしいな。そして何よりジャケ写の泉水ちゃんの美しさに萌え死ぬかと思った。

2007年06月03日

本/雑誌】 シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』

ジェイン・エア(上)ジェイン・エア(上)
C・ブロンテ 小尾 芙佐

光文社 2006-11-09
売り上げランキング : 64434
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久々に読み返し。何回読んでも面白いとは分かっているけど本当に面白い。初めて読んだときはロチェスター氏の妻が都合良く死んでしまったことにどうにも納得のいかないものを抱えていたけれど、今となってみればそうせざるを得なかったシャーロットの気持ちが分かり過ぎてむしろこれで良かったのだという気持ちにさせられた。それにたとえそういったロマンチシズムがラストで全開になろうとも全編を通して伝わるジェインの注意深さ、ある種臆病さは大変に可愛らしいものだし理解出来るので最後くらい華々しく浸らせてやれよーという気持ちが強くなったことも否定出来ない。ワタシも歳をとったものだ。

それにしても落ち込むジェインをロチェスター氏が慰める(?)くだり、「ひどいしょげようだ、すこし何か言うと涙ぐむほどーほら、もう、いっぱいたまって光ってますよ。まつ毛から一滴こぼれて、床に落ちたじゃないですか。」がもう堪らない。ロチェスター貴様ドSだなって罵ってやりたいくらいだ。でも涙ぐむジェインを見たらワタシもそんな気になるのかもしれない。『ジェイン・エア』にはこういった名場面が多過ぎてホント困る。今のところ唯一原書で読んだ本だけあるわ。

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